日本財団 図書館


 

も思った事もあったし、同じ様な事をよその里子が言っているのを聞いた事もあります。ああ、あの子も何年か前の私と同じ様に下手やなア、と思いました。かつての自分を見るようで、夢の親を美化するなんて無為な事をするよりも、本当に自分を愛してくれている今の両親を素直に受け入れればいいのにネ、と思いました。
熱を出した時、寝ないで氷嚢を取り替えてくれたのは、生みの親ではなく今の親、友達の事など夜遅くまでウン、ウンと頷きながら聞いてくれ、相手になってくれるのも今の親……。(本当の親なら……)という夢を、「夢」だと自覚するまで、大事なところで私は間違えていたのですね。(自分を本当に大事に思ってくれているのは誰か?)という事を。その子も早く解れば良いですね。
私は里子になったことで、二人づつ「父」「母」と呼べる人がいます。今の父と母、産みの父と母です。実の父はすでに亡くなりました。私を生んだ母は生きています。
元気らしいです。今の母は、その人を「あんたのママ」と言います。そして「あんたのママには、何か事情があったのだろうから、嫌わないであげなさい」と言います。
…多分、それは私には時間がかかるだろうと思います。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION